足の微小循環を核医学検査で可視化する
(当センター核医学科との共同研究)
下肢閉塞性動脈硬化症による足の壊死(最近の専門用語では、包括的高度慢性下肢虚血、CLTIとも呼ばれます)は進行性で治療が大変に難しい病気です。この病気は全身の動脈硬化の末期像と考えられており、心臓病や脳梗塞などで体力が落ちている患者さんに、長期の治療が必要となるため、治療方針の決定には高度に専門的な判断を必要とします。埼玉医科大学総合医療センター血管外科では、これまで評価が難しかった足の微小循環を、最新の核医学検査を用いることにより評価する研究を行っています(Hashimoto et al. Eur J Vasc Endovasc Surg 2025, Hashimoto et al. EJVES Vascular Forum 2025)。これらの知見は、血流を改善する手術やカテーテルの継続によって足を残す努力を続けるか、足を早期に切断することによって体力を温存するか、患者さんが迫られる難しい決断の助けとなり、生活の質の向上に寄与する可能性があります。
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99mTc-tetrofosminを投与し撮像したRNアンギオグラフィの累積画像。
右下肢のCLTIに対するバイパス手術後。 - 右足部断端は植皮により遅滞なく治癒した。
- 左足部は1年後にCLTIを呈した。
下肢動脈バイパスにおける
手術創合併症の特徴と予防法の開発
下肢閉塞性動脈硬化症の治療のために下肢動脈バイパス手術は効果的な方法ですが、切開箇所が治る過程でトラブルを起こすことがあります。この手術による創部合併症には、他の手術では見られない、いくつかの特徴があリます。切開部分の血流が低下していること、リンパ管の損傷が避けられないこと、薬物治療の影響で出血が止まりにくいこと、術後に足のむくみが起きることなどです。これらの特徴を持つ下肢バイパス手術で手術創の合併症や感染が起こる頻度やメカニズムを明らかにし、予防的な対策(手術直後から特殊なシールを貼り弱い吸引圧をかける治療)の効果を検証しています。
内腸骨動脈瘤の解剖学的な成因についての研究
内腸骨動脈瘤は、他の動脈瘤と同様に放置すると破裂し生命の危険がある病気です。しかしその発生原因は解明されていません。私達はこれまでの手術症例の解析から、内腸骨動脈の枝である上臀動脈と下臀動脈が、長い共通幹を有する特徴的な内腸骨動脈の分岐パターン(下図におけるGroup B)が、内腸骨動脈瘤の存在と関連することを発見しました。先天的な血管の枝分かれのパターンが、血行動態を通じて動脈壁に影響を及ぼし、瘤の形成に関与している可能性があります。
(右:Group B、左:Group A)
多発外傷における大動脈損傷の治療アルゴリズム
(当センター救命救急科との共同研究)
当院にはヘリポートを有する高度救命救急センターがあり、交通事故や転落などの受傷外傷の治療を積極的に行なっています。胸部や腹部の大動脈損傷も起きることがあり、生命に関わりますので手術が必要なのですが、内臓損傷、脳出血、脊椎の損傷なども同時に起きることがありますので、患者さんの全身の状況に応じて治療の順番や方法を工夫する必要があリます。救命救急科と血管外科で協力して治療にあたる中で、救命のみならず、救命後の機能予後にも配慮して後遺症を少なくする治療アルゴリズムの確立を模索しています。